子どもたちの理科離れ 地域全体で新たな取り組み/滋賀
(毎日 2006/4/29)
◇小中校が研究機関とネットづくりや科学実験など
子どもの“理科離れ”が指摘され、理数科教育に関心が。
03年の国際的な学力調査、「国際数学・理科教育調査」や「学習到達度調査」で
日本の子どもの理数系学力や読解力の低下傾向が浮き彫りになり、
理科教育を見直そうという動きが広がりました。
県内でも、地域全体で理数科が好きな子どもを育てる事業に取り組む小中学校や、
科学実験、ロボット研究室が人気を呼ぶなど、新たな取り組みが始まっています。
◇先生に面白さを認識させ、本格的に学べる場を
「10年たてばロボットがいる。ロボットを作る人がいなきゃ困るんだ」。
子どもの理科離れをなくす会(大津市)代表の北原達正・京都大講師が、
宇宙がいずれ身近になることを説くのを真剣に聴く子どもたち。
「ロボット研究室」の始まりの場面。
初心者向けの課題は、火星探査ロボットで、クレーターに見立てた枠内から
脱出するロボットを作ります。パソコンを使ってロボットの動作をプログラム。
初対面の2人が組み、約800個のパーツを数えることから開始。
「ロケットは、100万個の部品でできていて、
だれかが一つでもネジを締め忘れたら全員死んでしまう。
一つもなくさぬよう協力すること」。
2人で作業するのは、コミュニケーション力を高めるため。
子どもたちは、プログラムし終えたロボットを持って、クレーターのコーナーに。
だが、出口と違う方向に行くなど思うように進まない。
サポーター役の大学生の「どうしたらいい?」との問いに頭を抱える子どもたち。
何度も話し合い、入力をやり直す。
ようやく成功すると大歓声が上がり、抱き合って喜ぶ姿も。
成功したチームには、さらに上級コースが用意されています。
ロボットが決して別世界のものではなく、自分の将来につながることや、
試行錯誤の上での達成感を味わう。
北原代表は、「科学のだいご味は自分もやってみたいと興奮すること。
その道筋を作りたい」と。
同会は01年に発足。県内外で研究室や科学実験などを行ってきました。
大津市の公民館で開いたロボット研究室には、申込者が殺到する人気。
大津、草津、近江八幡のうちの計13小中学校は、
科学技術振興機構が05年度から行う「理数大好きモデル地域」のモデル校に。
地域内の小中学校が、大学、研究機関などとネットワークを作り、
地域全体で理科好きの子どもをはぐくむ初の取り組み。
滋賀大と連携して小学生が直流モーターを製作したり、
立命館大では、中学生がゲーム開発、ロボット操縦などに取り組みました。
子どもたちからは「大学に入ってもう一度やってみたい」と、興味が高まった様子。
北原代表は、出前授業やイベント化した実験ショーについては
「面白いと思うきっかけはあっても、その後が続かず、無責任」と。
「小学校で理科好きの子どもはどこへ行けばいいのか。
まず先生に科学の面白さを再認識してもらう場が必要だ」と、
指導者の育成、理科好きの子どもが本格的に学べる場の必要性を挙げます。
県教委の森幸一・学校教育課指導主事は、
「今後は学校の授業に結び付け、システムとして残らないか模索している」と。
琵琶湖を抱える滋賀の子供にとっては、環境科学を理解するという目的も。
単に成績を上げるだけではなく、理数科への興味を深めるために、
学校の授業でどのように取り組むかが問われています。
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◇日本の子供の学力
03年の学習到達度調査(対象=41カ国・地域の高1)で、
日本は「文章・グラフの読解力」で14位と、前回の8位から後退。
国際数学・理科教育調査(46カ国・地域の中学2年、25カ国・地域の小学4年)で、
小4理科で前回2位から3位、中2数学も平均点が9点低下。
各教科平均点1位は、小中ともシンガポール。
中2の「数学の勉強への積極性」が高いレベルの割合(17%)は、
国際平均値(55%)を大幅に下回り、国際的に下位。
文部科学省は、「我が国の子供の成績低下傾向がみられ、
世界トップレベルとはいえない」として、授業改善策に乗り出す方針。